2019年02月18日

先日、山口加代子先生の高次脳機能障がい -理解と対応ー の講演会がありました パート2

みやざき高次脳機能障害家族会あかりです。

平成31年2月1日(金)13時半から、
宮崎県総合保健センターで高次脳機脳障害に関する研修会がありました。
講師は、横浜市総合リハビリテーションセンターの臨床心理士をされている
山口加代子先生でした。
テーマは、「高次脳機能障がい一理解と対応一」でした。


初めの部分は高次脳機能障害の症状の解説が主となっていました。
記憶障害注意障害遂行機能障害社会的行動障害などの症状について、
専門用語をわかりやすい言葉に言い換えて、
具体的に述べられていたので、
高次脳機能障害になじみの薄い方もよく理解できたのではないでしょうか。

個人的には、右脳コミュニケーション障害「周囲の気配や雰囲気の認知障害」、
モデル事業の時には、報告されていなかった易疲労性に興味をかれました。
高次脳機能障害があるとそれを補いながら生活することを余儀なくされ、
脳に過剰な興奮を強いることになり、
過剰な興奮は身体の緊張を生じさせ疲れさせるのだそうです。
高次脳機能障害を抱えた人の疲れやすさにも
配慮していく必要があると強く感じました。

次に高次脳機能障害はどのような心理的影響を及ぼすのかが語られました。
思考停止(脳のフリーズ)、感情の供水混乱状態欲求不満
自分の変化への気づきにくさ(実感のなさ)や
否認外罰的態度などがまず現れると言います。

特に自分の状態に気づけないことが
高次脳機能障害の症状の大きな特徴だと強調されていました。
そして、やっと気づきに辿りついても、
その後には大きな喪失感や不安、抑うつ、怒り、絶望感、
他者への不信、無気力など、
さらにつらい症状が押し寄せます。
家族の心にも、命が助かったという安心感の後には、
喪失感、混乱、困惑、不安、怒り、仰うつなどが生じます。
私も聞いていて胸が苦しくなりました。
同時に、
だからこそ当事者にも家族にも支援が必要なのだということを痛感しました。
高次脳機能障害の大変さで頭が一杯になり、
何か救いはないものかと悶々としていましたが、
肝心の対応については、すぐには話されず、
後半にまとめて話がありました。

当日は特別支援学校等の教員の方々の出席も多かったようで、
ここで小児の場合の特徴についての話が挿入されていました。
多くの子供に前頭葉機能症状がみられるため、
外界からの刺激や他者とのコミュニケーションを通して、
自己像を形成したり、自己制御や対人技能・社会的ルールを
身にうけたりすることが難しくなりやすいと述べられていました。
後天性脳損傷児の支援においては、
早期に介入し、安心できる居場所と安心できる人間関係を確保し、
何で苦労しているのか、強みは何なのかを
本人・家族と共に理解すること、
達成感が持てる課題を提供すること、
現実的な目標を持ち(障害が治ることを目標としない)
将来を見越した関わりをすることが大切だと指摘されました。


ここから最後までが、大人の高次脳機能障害に対する対応の話でした。
「家で一緒に暮らせない」と訴える夫婦の実例では、
それぞれの言い分とそれぞれへの具体的な対応がわかりやすく示されました。
ただ話を聞くだけでなく、本人の行動のメカニズムや背景にある障害、
本人の気持ちについての言及、家族の大変さに対する共感、
本人の行動変容をもたらすような関わり方や
家族の気持ちの整理・ストレスへの助言、
本人に対して肯定的な感情を育めるような対応を
織り交ぜていくことが重要なのだそうです。

高次脳機能障害のリハビリというと、
どうしても機能訓練ばかりに目が行きがちですが、
その前に健康・生活リズムの安定、体力・耐久性、情諸的安定
といった土台の部分があってこそだとの話があり、
なるほどと納得させられました。
確かにそれらが整わないと高次脳はますます働かないし
訓練どころではないです。

その上で、次のようなそれぞれの高次脳機能障害への
対応のポイント解説もありました。
記憶障害には、覚えなくても目で確認できるようにし、確認する習慣を作ること。
地誌的見当識障害には、その人に合った代償手段を活用すること。
注意障害には、目や耳で気づきやすいようにして、一度に一つずつ伝え、
伝わったことを確認してから次に進むこと。
易疲労には、本人と周囲が理解して、必要な休息を自己管理して取るようにすること。
易怒性には、誘因を見つけて排除し、怒ってしまったら感情的にならず場面を変えること。
感情・欲求のコントロールには、本人と話し合ってルールを決め、
必ず紙に書き、守れたことはほめること。

全体的には、障害は一人一人違うと認識し、
その人の気持ちに寄り添って、納得できる説明をしながら、
感情・プライド・障害内容に配慮して支援すること。
専門家、支援者、家族会の仲間に継続的に相談できる環境を確保すること。

いずれのポイントも、講師の長年の経験に裏打ちされた
具体的・実践的な内容であり、非常に説得力に満ちたものでした。
私達もこの講演会で得た知見を実際の支援の中で
活かしていかなくてはならないと強く思いました。



Posted by あかり at 16:03│Comments(0)
 
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先日、山口加代子先生の高次脳機能障がい -理解と対応ー の講演会がありました パート2
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