2017年08月02日
感情コントロールの低下
人は社会の中で、他人の気持ちをくみ取りながら自分の気持ちとの折り合いを見つけ、互いの均衡を取り合って生活しています。ですから、怒りを覚えたときに一瞬、ここで怒鳴ってよいのだろうか?相手はどう感じるだろうか?はたまた、怒鳴った後でも、「やってしまった」と振り返るのが私たちの日常ではないでしょうか。
高次脳機能障害で感情コントロールが困難になると、この「一瞬」が欠落してしまします。
思ったら口に出さずにはいられない、気づいたときには言動、行動に現れている状態です。そこにはどうにもコントロールのつかない自分(脱抑制の状態)がいます。
脳の損傷をきっかけに、
●つねにイライラしやすい
●ささいなことに興奮して怒鳴り声を上げキレる
●ちょっとの時間も待てない
●テレビを見ながらやたらと感動して泣いている
さらに自己中心的・意欲不満などで、場にそぐわない不適切の行動をとり、他者となじめず生活や社会的な活動に影響が及ぶようになったりします。
高次脳機能障害の支援には、精神疾患や発達障害とは異なる固有のアプローチが必要です。
対応のポイント
【本人の対応】
感情のコントロールができないことを自覚し反省する気持ちが芽生えるようであれば改善へ
と導くチャンスです。その為のスキルを身に付けられるように訓練します。
①原因から物理的に離れる ‥‥‥ 自ら怒りの対象から離れる・見ないようにする。
怒りを自覚して行動を修正する。
②気分を切り替えるきっかけを決めておく ‥‥‥ クールダウンに導く。
③別のことを考えるために、
あらかじめ楽しいテーマを用意しておく ‥‥ 好きな物、好きな人のことなど別のこと
を考えて気持ちを切り替える練習をする。
【周囲の対応】
①約束して守らせる ‥‥ 必ず本人の理解を得た約束事にし、うまく対応できた時
は“マル”など、結果を振り返る。
②原因から物理的に離す ‥‥ 怒りの対象から遠ざける。
③フィードバックする ‥‥ 落ち着いてから本人ができるような簡潔な説明をし、
「何でおこってたんだろう?」「何ですぐに腹がたつのか?」
‥と振り返りを行い取るべき行動を教える。
ただし、怒りを思い出すことで怒りが再燃するようなことが予測される場合は、
この対応は慎む方が懸命です。
④反社会的な行動は禁止する ‥‥ あたりまえですが、社会的に許されない行動は
断固として禁止し、一貫した対応を取る。
⑤良いところは褒める ‥‥ うまく回避できた場合は、きちんと褒めてあげましょう。
イライラしやすく怒りっぽくなったのは、後遺症が原因である
ことを説明して、自分自身を過度に責めないようにすることも
必要です。
高次脳機能障害の場合、怒りやすいポイントやきっかけ(いわゆる"地雷")が潜んでいる場合があることも忘れてはなりません。
"地雷"を踏まないこと、これが重要です。
感情の爆発を防ぐことは、本人はもちろんのこと周りで支える人たちが疲弊してしまわないための大切なポイントです。
イライラしている人や怒っている人のそばにいると「もう、嫌だ!こっちまで怒れてくる!!」というようなことも多々あります。
周りの人たちも、時には適当に受け流すくらいの気持ちで背負い込み過ぎないようにすることが長く支えていく秘訣です。
安定した環境と信頼できる人の存在が本人の学びを促進します。支える側のストレス発散方法も考えておきましょう。
~~高次脳機能障害「解体新書」阿部順子、浦澤秀洋監修/MCメディカ出版~~
Posted by あかり at
19:28
│Comments(0)